ア・ラ・モード
出かけてくる、とソファーでくたっと寝ている栄純に放つと栄純はどこへ?誰と?と問いかけてきたので一人でフラッと、と伝えればいち早く着替えた栄純が俺も行きます!って目の前に現れた。
私が行きたいのはショッピングモールなんだけど、いいのだろうか。
外に出て隣を歩く栄純を横目で見る。楽しそう。

「帽子だけでいいの?若い子たち沢山いると思うけど」
「大丈夫っすよ!しれっとしてれば意外と!」
「バレても知らないからね」

本当に大丈夫なのかな。バレたら即行別行動とるけど。だからバレないで欲しいんだけど、この自信はどこからくるのだろうか。じっと見ていたら栄純が私の視線に気付く。恥ずかしくてすぐに逸らした。やっぱ、黙ってればイケメンだと思うんだけど。実際、高校の時だってバレンタインは結構貰ってた。その中にいくつ本命があったのかはわからない。一つは確実だけど。思いの強さは絶対にそれが一番。
電車から降りて、折角だから夕ご飯どこかで食べていく?とどこにしようか話していればショッピングモールはすぐだった。ショッピングモール前の通りにはベンチがいくつかあって、カップルが二人で一つのカップに入ったアイスをピンク色のスプーンで食べている。
いいな、なんてふと思ってしまう自分に驚いた。栄純はどう思ってるんだろう。手は繋ぎたいって言ってるけどああいうのには興味はないんだろうか。やっぱり私が女だからああいうのに憧れるだけなのかな。

「どうしたんすか?」
「え?」
「……アイス?美味そーですね!食べます?」
「……」
「じゃあ、帰りに食べましょう!!」
「うん、」

私がじっと見過ぎていたのか、私の視線の先のアイスを指差した栄純に問いかけられて、無言で頷いてしまった。
アイスは食べたいけど、アイスじゃなくて食べ方を見ていたのであって。その辺この天然男はわかってくれるだろうか。
帰る時に寄ろう、ということになってモール内を散策する。
久しぶりにきたから少しだけ気持ちが踊る。

「あ、ちょっと寄っていい?」

店の前に飾られたマネキンコーデに惹かれて店に入る。今日の目的はくたびれてきた服を捨てて、新しく衣替えをすること。と言っても一着二着の予定だけど。
マネキンが着ていた服を店の中で見つける。三色ある。どうしよう。こういう時の栄純だ。

「ね、何色が似合う?」
「んー、なんでも似合いますよ!」
「……ほんとにそう思ってる?」
「もちろんです!!」

そうだった、栄純に何か意見を求めてもいつもこうだったんだ。髪の長さを聞いた時だってどっちでもいいって感じだったし。嬉しい答えは返ってきたけど。けど、私はそういうことを聞いているんじゃなく。
ていうか、暇じゃないのかな、栄純。私は適当に欲しいもの見つけて調達してくるけど。
一度服をハンガーラックに戻した。

「栄純は何か見たいのある?」
「ついてきます!」
「あ、そう……」

休みの日、今まで何してたっけ。家でゴロゴロ以外に……。そもそもなんで栄純はついてきたんだっけ……、そうだ、俺も行きますって突然。
栄純にとっては特別興味がある場所でも、むしろ来ても暇だと思うのにどうしてついてきたんだろう。
疑問に思いながらも一緒にいてくれる栄純を付き合わせて買い物終わり。
お手洗いに行って少しだけ化粧も直してから、今日の夕ご飯は栄純のリクエスト通りのものにしようと考えて出た矢先、少し離れたところにいる栄純と、女の子達。

「やっぱり!沢村さんですよね!」
「わー、握手してください!」
「俺のファン!?」
「いや御幸、」
「ばか!」
「おーそうかそうか正直なやつだな!!」

と、言いつつ嬉しそうに握手をしている栄純。周りも栄純のことを知っている人がちらほら集まりだすし、簡単に抜け出せなそう。私が引っ張ってくのもまた騒ぎになるだけだろうし、栄純にはLINEをいれて外で待つことにした。
ショッピングモールから少し離れた人通りの少ない場所。一旦人目のないところにいた方がいいと思って。
それにしても、今日は申し訳ないことをしてしまった。付き合わせちゃっただけだったし。今日何が食べたいかな。

さんすみません!!」
「早かったね。だから眼鏡もしたほうがいい、って」
「いやー、視界が狭くなるから嫌なんすよね……」

そんなことを言ってる場合か、と。自分の知名度に自覚を持ってほしい。いつもいつも、まだまだだ!なんて言ってるけどそれと知名度はまた別の話。若い子達から人気なのに、そんな子達が大勢いる場に出かけるなんて自傷行為だ。

「じゃあ帰ろっか」
「アイスは?」
「今更戻らなくてもいいよ。またバレるのも怖いし」
「………」
「……別に気にしてないからね?私。むしろ、休みなのにありがとう」

目的のものも買えたし、早く返って夕飯の準備だ。その前にいつものスーパーに寄りたい。
何か安くなってないかな…、じゃなかった、今日は栄純が食べたいものを、

「他人行儀!!」
「!」
「一緒にいるのなんて当たり前じゃないっすか!なのに全然いれなくて俺……!!一緒にいてーのに!」

何を食べたい?そう聞こうと栄純を見上げ瞬間、私に声を上げた。
考えてた。どうして栄純が興味のない場所へわざわざついてきたのか。気まぐれなのか、家にいるのが暇だったのか。特に理由はなかったのか。何だろうなって思ってたけど、私の思いついた答えの中に正解はなかった。
私と一緒に居たい。一番シンプルで、嬉しい理由だった。私も私でどうして栄純が休みの時に買い物に行こうとしたんだか。

「ごめん」
「!」
「別の日にすればよかった……」
「じゃなくて!」
「え?」
「自分が情けねえー!!さん俺に気遣ってるでしょう!!使わないでください!」
「別に、」
「使ってる!!」

使ってない。と、言い切れはしなかった。実際、嫌われたくないから栄純の言うように気を遣ってるところはあるかもしれない。怒る時は怒るけど。
栄純はじゃあ、私にどうしてほしいのか。気を遣わなかったらあなたは私のことをそれでもめんどくさいって思わないのか。付き合っててめんどくさい女になんてなりたくない。だけど。

「我儘言ってください!」

それを受け入れてくれない、なんて思うこと自体間違いなのかもしれない。私が栄純のことを信じきれてないってことになってしまう。
だからちょっとくらいは、この言葉を信じて自分がやりたいこと、伝えてみるのもいいのかも。

「じゃあ、アイス。カップ一つにして二人で食べたい」
「……食べましょう!!」

私の手をとって来た道を戻る栄純に続く。
栄純も嬉しそうにするものだから、それだけでその日の夕ご飯のことを忘れるくらい幸せな気持ちだった。
アイスクリーム