「年下キラーだね、」
「私のなにを知ってるの」
「同棲してる彼氏も年下なんでしょ?」
それはそうだけど、って、そんな悠長な事を話してる場合じゃないのです。直面している問題はやや難しい。
昨日の会社の飲み会。違う部署だけど野球が好きだという後輩と話が弾んで、野球選手なら誰が良いかと聞かれたので迷いなく栄純だと答えた。じゃあ俺はどうですかと唐突に言われたのでないかな、とさらりと言えば本気なんですけど、と返されて。
「ていうか、どうして助けてくれないの」
「だって私もの彼氏見たことないし見たいなーと思って」
えへ、と付け合わせのサラダを食べる同期は、昨日その後輩が、ほんとに彼氏いるんですか?写真は?と追及してきたのを止めてくれなかったのだ。あっても見せられるわけないじゃん。ほんとにまったく。
「写真嫌いなんだってば」
「寝てる時とか」
「盗撮じゃん!」
「彼氏なんだからいいでしょ。笑い物にしようってわけでもないし」
実はあるけど。寝てる時の写真。ソファーで気持ちよさそうに寝ていたものだから。だからと言ってそれは私専用なのであって絶対に人には見せられない。
「それに、がどんな人が好きなのかなって」
「……見た目じゃないし」
「そんなに見せたくないの?そんなにブサ、……パッとしない人?」
「かっこいいよ」
「あ、だから私には見せたくないとか?もーやだ~~!でも後輩くんにはちゃんと見せないと!ないなら撮ってきてね!」
いやいや撮っても見せるわけないってば……、なんて頑なに否定もできず。どうしたものかと答えは見つからないまま家に帰ると電気はすでに付いていて。
「さん!おかえりなさい!」
「ただいま。早いね?」
珍しくミーティングが早めに終わって、と近付いてくる栄純にカメラモードにしたスマホをかざしてみた。カメラとわかったのか、首を傾げながらピースをする。カシャ、と写真を撮ると栄純は不思議がる。
「な、なんすか……?」
「……ううん、なんでもない」
「?」
……かっこいいな、やっぱり。栄純がプロとして活躍せずに有名じゃなかったとしてもこれは、見せたくないかもしれない。
「ねえ栄純」
「はい?」
「周りに栄純のこと見せたら、困るよね」
待たせてしまうのも嫌だったから簡単にできるものを作ってしまったけど今日も栄純は美味しいと言いながら食べてくれる。そんな栄純は私が聞いたことに対して目をパチクリさせた。
「なんで?」
「えっ、だって、プロだよ?有名人だよ?」
「?」
「テレビでうるさく言われるようになっちゃうかもしれないし」
「俺は全然!むしろ俺の彼女はさんだって知ってほしい!名前出したいくれぇだし……」
「そ、それはやめて……」
一応、私の意向で私の存在はテレビの取材とかでは上手く隠してくれている。ほら、なんか、いつ終わりが来るかわからないし……。言わないけど。
「でも、名前出した方がさんには俺がいるってわかってもらえるじゃないですか」
「誰にわかってもらいたいのそんなこと」
「そんなこと!?そりゃさんに言い寄る男性達に!」
「そんなのいな…………、いよ」
「なんすか今の間は!!ちょっと考えましたよね!?いるんですか!?そういう不届き者が!!」
ガタッと身を震わせる栄純。いるけど、いるけどでも私にとって栄純を超えるような人なんて現れないし。
「いないよ」
「やっぱり公言するべきだ!俺の彼女はさんって言う美人で優しくて料理上手くてちょっと怖いとこあるけど可愛いとこもあってそれで…」
「栄純」
「はい!!」
「いいから。座って食べて」
「はい」
ピシャリと、この話はもう終わらそうと静かに促した。少し納得いかなそうな表情はしてるけど。でも、それだけ私のことを思ってくれているってことだ。
私とは、考えが逆なんだな。私は栄純を独り占めしたくて写真を見せないけど、栄純は周りに自慢したいんだ。でも、残念ながら自慢できるような人間じゃないよ、私は。普通の一般人だから。
「さん!彼氏さんの写真用意できました?あるんですか?」
「……うん」
「え!私も見たい!」
「はい」
「…………」
「……沢村はさんがファンなだけですよね?」
「彼氏を見せてって!もー」
ほら、私と付き合っているなんて、信じてもらえないくらいな場所にいる人なんだよ、あなたは。
彼氏