出したばかりの炬燵。買いに行った時に、栄純にこれでもいい?と写真を送った炬燵はファンシーな柄をしてたのに、さんが好きならなんでもいいっすよ!とか言い出していたな、そういえば。わかった、と言いつつ買ったのは今ぬくぬくしているこの無地の炬燵。色は赤。なんか、赤って栄純ぽいから。
まさかこんな早くに出番が来るなんて思っていなかった。
「雪だるまつく~ろ~~」
炬燵にみかんって、どうしてこんなに相性がいいんだろう。部屋の中から見る雪景色も最高。テレビでは都心に降る雪が交通網に大きな影響を与えてるってずっとやってるから消してしまった。
「自転車に乗ろう~~」
雪国の温泉とか、その内行きたいな。露天風呂とか最高そう。やっぱり雪は暖かいところでゆっくりしながら見るに限る。自転車には乗れない。
「ずーっと一人でいると~~壁の絵とおしゃべりしちゃう~~」
温泉って好きかな、栄純。一緒に入りたいから部屋に露天風呂が付いてる温泉がいいな。でも、ゆっくり、なんて栄純には似合わないかな。好きじゃなさそうかな。
「外行こうさん!!」
「…………」
「雪っすよ??雪!!」
ずっと歌わせておけば収まるかと思って黙っていたのに、栄純は今日ずっとこの調子だ。雪だから練習もできない。私も外は出歩きたくない。ずっと部屋の中でぬくぬくしている私のそばで栄純はソワソワしていた。よく言うよね、犬は喜び庭駆け回るって。私は猫だから炬燵で丸くなるんです。
「出て何するの」
「雪だるま作ったり雪合戦……は無理か、鎌倉作ったり!」
「寒いよ」
「動いてればあったまります!」
それはそうかもだけど、それまでが寒いじゃん。あと、単純に疲れる。多分筋肉痛になる気がする。私普段運動なんて全然しないし。高校の頃とは違うんだ。
えー、と栄純はテーブルに顎を乗せてつまらなそうにする。
「高校の頃はやってたじゃないすか、雪合戦」
「みんな結構容赦なかったよね」
「先輩たちさん狙いすぎっすからね!特にキャップ!!」
それは多分、栄純が絶対私を守ってくれるからわざとだと思うけど。真相は聞いてないままだ。
栄純は私の代わりに雪まみれになってた。やる気がなく動かない私の代わりにとても動いてくれていた。それが嬉しくてわざと動かなかったところもあるんだけど。となると私もやってることは御幸と同じようなものか。
ていうか、栄純の中では御幸はいつまでもキャップなのね。気持ちはわかるけど。私も哲さんのことはいつまでもキャプテン!って思ってるしなあ。
もう一つ蜜柑を食べようと手を伸ばしたところ、パシ、と止められる。
「つーことで、外!出ましょう!」
「もうそんな元気ないよ。全然動いてないし」
「なら尚更!健康的にもいーですよ!」
「寒いからいーやーでーす」
雪は中から見るに限る。あんな寒空の下で動くなんて、私には無理だ。
止められた手は弱まって、私は二つ目の蜜柑を手にとって皮をむき始める。栄純は両手を炬燵の中に入れて背中を丸めた。
「……数年ぶりの雪らしいのに」
「…………」
「さんと楽しみたいのに」
「…………」
「さんとじゃなきゃ意味ねーのに」
「わかった!もうわかった!!」
まさかここまでしょんぼりするとは思っていなくて。そんなに私と外に出たかったのかと思って、根負けしてしまった。
これ食べ終わったら外出よう、と仕方なしに提案すれば栄純は私から蜜柑を半分奪って一瞬で食べた。よし行きやしょう!って。あれ、私、栄純にコントロールされてる?
ゴミ捨てに行く時に使うアウターを羽織って厚手の靴下を履いてはしゃぐ栄純の後に続いて外を出た。雪はちらほら降っている程度だ。
「さんさん!」
「?」
「見ててください、あそこに当てるんで!」
言うなり栄純はいつの間にかに手のひらに丸めていた雪の塊を持って、数メートル先の街灯目掛けて振り被った。おいしょーって、……外した。
「くっ、野球ボールなら当たってました!!」
「それはそうだろうね」
「さんもやります?」
「やりません。作ろ、雪だるま」
どうせあたりっこないし。野球ボールなら私もまだしも。
マンションの下で雪だるま作りに精を出していると、マンションに住む方々から頑張ってね、と激励の言葉をもらう。栄純はそれにご丁寧にビシッと頭を下げる。人当たりが本当にいいなあ。
ゴロゴロと雪を転がして、これくらいでいいかと栄純を見れば、とても大きい雪玉が完成していた。私じゃ絶対あれは動かせない……。
「さん作ったの上に乗せますね!」
「うん」
とことこ栄純は私のところまで歩いてきて、私が転がしていた雪玉を持ち上げて、自分が転がしていた雪玉の上にそれを乗せた。よく持ち上げられるな、そういうところは流石スポーツ選手だ。
「完成~~!!」
出来上がった雪だるま。見るからに私が作った方が小さくて、小顔雪だるまになってしまったけど、これはこれでいい味出してる。多分。
「名前付けなきゃっすね!」
「名前?」
「だってこれはもう言うなれば、俺とさんの子供ですよ?名前大事!」
「は、」
「何にします?」
ニコニコと純粋にそう聞く栄純。何も考えてなさそうなのが逆に憎い。私だけ狼狽えている。
ちょっとは困ればいい、と私は栄純に好きに考えて、と言い放って先に部屋に戻ってしまった。
栄純が考えて考えて考えぬいた名前、聞くのはちょっと、いやかなり楽しみ。
あとでちゃんと雪だるまの写真撮っておこう。
真っ白